昨日(11月17日)、東京・早稲田のイベントスペースで、拙著『プライドワーク』(春秋社)の新刊記念トークイベントが行われた。
主催は、レズビアン・メディア「デルタG」(
http://www.delta-g.org)。
ソーシャルベンチャーに興味ある聴衆と一緒に、デルタGをケーススタディにしたソーシャルベンチャーの可能性を話し合ったのだが、今後の課題がはっきりした。
それは、ソーシャルベンチャーの根幹となる「ミッション」と「ニーズ」を明確に設定すること。
ソーシャルベンチャーの基礎知識については、下記サイトを見てほしい。
●ソーシャルベンチャー 〜もっといい世の中を作ろう!
http://gogo-socialventure.blogspot.com/ 上記には語られていないソーシャルベンチャーの成立条件を語るなら、ミッション(使命感)の自覚→支援される当事者からのニーズの明確化→ビジネスモデルの確立→持続可能性の向上というプロセスが欠かせない。
このイベントのゲストには、女性起業家に低利子で資金援助し、ビジネスモデルを鍛えるセミナーを行い、起業後のフォローも行っているWWB/ジャパンの代表・奥谷さんや、NPO「コトバノアトリエ」代表理事の山本さんなども列席した。
両名とも、拙著『プライドワーク』に詳細にそのビジネスモデルが描かれているので、ここでは骨子だけを説明するけど、たとえば、コトバノアトリエの場合、中高生に小説指導をしていた山本さんは「放っておくとニートになる人たちがいっぱいいる」という社会的な問題に突き当たった。
そこで彼は、ニートを支援するために何が必要かを考えた。
ニートとひとくくりにしても、若者自立塾のようなものでは、誰もができる能力まで引き上げるのがせいぜいで、ニート個々の才能を職業に結び付けるような働きかけがない。
それならば、ニートの中でも働く気持ちだけはあって、何かしたいけど、チャンスに恵まれない人を支援する形は作れないか?
両親がクリエイターだった山本さんは、「クリエイター志願者のニート」にターゲットを絞ることで、ニートから自営業として独立可能な道へ誘導できるよう、とりあえず「マンガ家志望」で地方在住の人に気軽に上京でき、しかも家賃が安く、バイト時間を増やさずに済む住宅支援をすることで、「せめてフリーターになって頑張れば、道は開ける」という成功モデルを提示する試みを始めた。
それが、「トキワ荘プロジェクト」。
民家を丸ごと安く借り受け、部屋別に3〜5万程度の家賃で住めるようにした。
礼金・敷金・保証人不要。
光熱費などの公共料金やインターネット接続料も無料。
既に6軒の「トキワ荘」が生まれ、それを管理する専従スタッフもなんとか家賃収入や、マンガの仕事を彼らにとってくる営業マネジメント代などで食えるようにし、やる気のある若者を支援するビジネスモデルを持続可能な仕組みに育て上げた。
このケースでは、ニートをレズビアンと言い換えれば、同じモデルで地方在住のレズビアンのクリエイター志願者を上京させ、家賃収入やマネジメントを事業化することも望めるだろう。
漫画家志望に限らず、ミュージシャン志願者や、カメラマン、映像作家や文筆業など、いろんなアーチストの卵たちを集めても面白いかもしれないし、国内外から集めれば、新聞やテレビなどのニュースで取り上げられるので、デルタGへのアクセスがそのつど増えることも見込まれる。
アクセスは、ビジネスを多様化させていくことでニュース素材をより多く提供していけば、自然に増えていくだろうし、それはその後の広告収入の担保に成長可能だろう。
ただし、事業というものは、一つの事業で短期間に収益を望もうとすると、コストがかかる。
レズビアン・クリエイターのためのゲストハウスの試みは少しずつ物件数を増やしていくとして、デルタG公認の人材をより多く集めて、彼らを男女共同参画セミナーなどの講演や学校の授業の講師としてネット上から売り込んでいくマネジメント(人材派遣)も試みられてよいだろうし、地方から上京するレズビアンに対して1日で東京近辺のレズビアン・スポットを回っていけるツアーを企画・運営するような年1回の事業があってもいいだろう。
また、デルタGの活動趣旨に賛同してくれる著名人を探し、サイト上に名前を連ねてもらい、たとえば都内で行われる著名人のイベントでデルタGの広報フライヤーを配れるような協力を願い出て、少しでも仲間を増やしていく広報活動も必要だろう。
さらに、人材が集まれば、わが子の性志向に悩む親や教育関係者向けのカウンセリング事業も見込めるだろうし、ヘテロ女性だけでは見えてこない「女性向け商品」の開発のためにデルタGの読者たちからアンケートでマーケティングをするような市場コンサルティングもやがて可能になるかもしれない。
もちろん、デルタGが日本やアジア発のレズビアン関連ニュースを欧米のクィアメディアに売ることも想定できる。
しかし、もっとも重要なのは、ビジネスモデルの豊かさがある反面、いつまでに何をやるかという事業計画と、優先課題として支援されるレズビアン(あるいは解決すべきレズビアン関連問題)とは何なのかを突き詰めておくことだろうと思う。
つまり、ミッションの自覚こそが、当事者ニーズを明確にしてくれるのだ。
カムアウトできないことが致命的につらいことであるならば、その深刻さを解決する方法を真摯に考えることこそ、ニーズのありかにたどりつくヒントのように思われる。
カムアウトして発言する著名なレズビアン、表現するレズビアン、教育現場のレズビアンなど、レズビアンのイメージが個々のブリリアントな才能に依拠するにしても、彼女たちと連携しながら、広く社会に「レズビアンであることは楽しい生き方だ」という空気感が浸透していくことが急務であるように思う(※それは必ずしもカムアウトを強要することを意図しない)。
レズビアンを核にしていても、たとえば「女の子が好きな女子」というゆるい汎用性に着目したグッズや写真集、イベント、映画、ファッションなど、いろんなプレゼンテーションは可能だろうし、そういったポップ・イコンを組織するデルタG主催のお祭りが年1回ほど行われてもいい気がする。
たとえば、野本かりああたりのミュージシャンは、デルタGのサイトでインタビューが載るだけで、それまで自分がノンケだと思っていた少女たちをレズビアニズムへ目覚めさせる契機になるような気がする。
そうした「目覚め」を潜在的に必要とするニューカマーたちへの教育としても、デルタGの可能性は開かれているように思うし、300〜500人規模のイベントなら半年ほどの準備期間で今から可能なものだろう。
僕自身は、レズビアンに限らず、すべてのマイノリティのみなさん(=社会的弱者)に対して、マスメディアに上手に露出していくノウハウを遅かれ早かれ有料ダウンロードできるようにしたいと考えている。
何をすれば、こぞってマスメディアが集まり、かつ、良心的な雑誌記事やテレビ番組を作ってくれるのかについては、僕自身が自分の本のパブリシティのために開発してきたし、また記事や番組を企画・編集・制作(執筆)する現場に携わってきたので、具体的なノウハウが蓄積されている。
金をかけずに広報をするなら、取材されるだけの価値ある活動をすればいいし、ソーシャルベンチャーはまさにそれを地で行く活動なのだ。
僕自身、今後1〜2年は少なくともソーシャルベンチャーの広報の面で支援していきたいと思っているし、デルタGにもぜひ頑張ってほしいと思っている。
これは、男性中心社会を作ってきた原罪意識というよりは、レズビアンの中にはブリリアントな才能の持ち主が社会の表舞台に出ないまま少なからず眠っているという勝手な思い込みによるものだが、少なくとも僕の知り合いのレズビアンはクールでかっこよく、僕にとってレスペクタブルな存在だし、端的に好きだ(とくに美形のレズビアンは横顔を見ているだけで、僕の中の女性ホルモンを刺激する)。
今は自己評価の低い人が少なからずいようとも、デルタGが動き出せば、その動きに刺激される仲間は続々と集まってくるだろう。
一人の勇気は、百万人の愛を集めることだってあるのだ。
そもそも、日本やアジアのレズビアン・アクティヴィティは、欧米のそれに比べればおとなしい。
でも、だからこそ、未開拓の潜在市場が大きいともいえる。
そこで、こんなキャッチ・コピーをデルタGにプレゼントしたい。
それは、「もっと女が好きになるサイト」。
デルタGのミヤマアキラさんが、「まだまだ女性は自己評価が低い」と言っていた。
しかし、「女が女を好きになる」契機は、360度マルチに開かれているはずだ。
たとえば、世界的な女子ボクサー=ライカ(日本人よ)のファンの多くは女性だけど、フェミ界隈では格闘技は男の世界の産物のように誤解されてあまり話題に上らない人物だと思うけど、そうした人材は実はいっぱい眠っている気がする。
可愛い服を着た雑誌モデルの少女たちが人気を集めるのも、その服を着たら「私は私をもっと愛せるかしら」という視点で少女モデルを追いかける女性はいるだろうし、内なる男性視線でモデル女子に萌える女性もいるよね。
緒方貞子さんのようなおばあちゃんに恋い焦がれる女性もいるだろうし、僕のようにデカくてゴツいヘッドフォンを装着して目を伏せる横顔のジョシに萌える女性もいるだろうし、女スィッチでの「働きマン」の社内の先輩にキュンとしてる「おひとりさま上等!」のOLもいると思うし、女性の好みはさまざまだからこそ、デルタGでそういう「私の身近な愛すべき女性」を読者たちから推薦してもらってもいいだろうし、女性が女性を互いに肯定できる回路をそこに見出せるようになれば、「女であること」の豊かさに自己肯定感を抱くチャンスになりうると思う。
そのように、「自分の好きな女」を女性自身が具体的に紹介していくだけでもアクセスは増えると思うし、これまでのワーキングウーマンやファッションに特化した女性向けサイトとは一線を画して、「女性の生き方」のロールモデルをいっぱい提示できるように思う。
そこにこそ、女が女を愛する(=女である自分を愛する)ためのプライドワークがあるように思うのだ。
子どもを産むだけが女の人生ではないし、結婚するだけが女の通過儀礼ではないし、女が自分らしくあるためには、まだまだ知らされていないロールモデルが豊富にあることを伝えるだけでも価値あるサイトに育っていけるような気がする。
男性社会の作った同調圧力を軽やかに突破していけるしなやかさは、きっと分かち合えるだろうし、女だからこそ戦わずにつながれる関係も見込めるはずだと思うのは、必ずしも思いすごしではないと僕は考える。
もちろん、このようにレズビアニズムの汎用性を純粋に肯定する論は想定外の誤解を生むかもしれないけど、たとえばPUFFYのような「お友達」から同棲中のレズビアンカップルまでの間を上手に埋めることはできるように思う。
女性が女性であることの豊かさに気づくチャンスが豊富にあるとわかれば、それだけでも女性どうしが連帯する意味の大きさにもたどりつける気がする。
女性が好きな女性でも、あえて女性と交際しない女性だっているだろうけど、女性が自分の中の女性性の肯定チャンスに触れることこそが、遠回りのように見えて、その実、一番早く(大きな意味で)同性を愛する契機になるような気がするのは、甘い見識なのだろうか。
僕は、女性にもっといろんな意味で自立してほしいと思ってる。
経済的自立、性的自立、組織からの自立…。
たぶん、僕は自立した女性が好きなのだ、大きな意味で。
だから、デルタGには勝手に期待してる。
これを読んだ女性には、一度いいからデルタGにアクセスしてほしいし、自分が無理なく出来ることで参加してほしいと思う。
もう一度、書こう。
一人の勇気は、百万人の愛を集めることだってあるのだ。